『春告げ鳥』
貴方の指は わたしの髪を掻きあげる
そしてわたしの 心のヴェールを持ち上げる
わたしのの涙を すくいあげる
わたしのこころに青空が広がっていく
この青は わたしたちの暮らすこの大地の上に広がる空
純白の雲が
わたしたちの上を通り過ぎていく
ちらちらと葉が手を振る 白羊樹の並木の上を
緑色に広がる 波打つ牧草の上を
貴方の瞳は わたしの夢を抱き上げる
そしてわたしは 心の憧憬をつむぎはじめる
わたしの肌を染め 熱くたぎらせる
そして、ああ、貴方の指はわたしの眠りを妨げる
貴方の指は ブロンズの馬の感触がする
欅の幹のあの金属のよう冷たい感触がする
貴方の指は わたしを弄ぶ
わたしを 遠くへ連れ去ってしまう指
貴方の指に くちづけを
わたしの唇が 貴方への愛おしさを 告げている
わたしたちの交わす この大切な絆を求めている
貴方の唇とわたしの唇が触れあう時
わたしの肌は燃え上がり 逆巻き 激しい焔が巻き起こる
貴方を求めて
わたしの髪は 貴方の身体に絡み付く
わたしに与えられる 貴方の剣と一緒に
貴方の固い身体も 逞しい肩も どこ迄も走っていける脚も
漆黒の瞳も髪も 凛々しい声も
そして貴方の純白の大きな翼も 巻き起こす風も
わたしがうばってあげる 貴方の全て
天空の青い瞳は貴方にあげる 赤く震える唇と一緒に
わたしのたぎる血も 溢れる涙も 心臓の拍動も
細い腕も 自慢の脚も 華奢な肩も
柔らかな乳房も 白いお腹も 芳香の肌も、
輝く金色の髪も 薔薇色の頬も 貴方を想う甘い声も
全てを替わりに 貴方にあげる
だからお願い
貴方から告げて欲しい 春告げのあの緑色の小鳥の歌のように
ぼくのアスカ、と
愛おしいアスカ、と
Dec.5 Souryu-Aska.L.
『vegetation【増殖】』
komedokoro
「あら、可愛い詩じゃないの。あなたが書いたの、ミサト?」
「まさか! 今さらこんな詩がかけるほど純心ですかって。最後にちゃんとアスカって呼んでって書いてあるでしょうが。」
「あら、ほんと。でもただ純心にしては、結構激しいじゃない?
決意表明みたいな詩だわね。」
「この頃あの2人、なんかぎくしゃくしててさ。かと思うとこんな詩を書いたりしてるし・・・私恋愛経験あんまり豊富じゃないからな・・・いいアドバイスもできなくて。」
「あんまり、じゃなくて全然、じゃないの? あんたが他の男と付き合っている所って見た事無いわよ。」
リツコが意地悪だか、からかっているのだか分からないような表情でいうと、ミサトは慌てたように両手をばたばたさせて言い返した。
「そ、そんな事無いわよ、技研の吉村とか、史学科の田原とか、蕪木とか、結構付き合ってたわよ。」
「それって、単なる飲み友達じゃないの。蕪木君は私も知ってるけど、あんたの事を、あんなに楽しく酒が飲める奴はいないって、褒めちぎってたわ。」
「ぐ・・・あんにゃろう、これだけいい女が隣で飲んでて楽しい飲み友達か。きんたまついてんのかっ!」
吐き捨てるようにいうミサトを呆れた様に見るリツコ。
「あんたその台詞で、女でございっていってもなかなか・・・。」
「どうせ、あたしゃねっ!あの、くそ加持以外から口説かれた事もないわよ。」
「ま、あんたに比べたら、アスカの方がよほどいい恋愛してるんじゃないの?」
「あんただって、人の事が言えるような事はしてないでしょ。」
「まぁ、親子丼の上にレイとまで二股かけられて・・・最悪よね。」
「余りにも男運が悪すぎるわよ、私達は。嗚呼!こんなにいい女なのになあ!」
天を仰いで長嘆息のミサト。その間にも苦笑いしながらもう一度アスカの詩を読み直すリツコ。ちょっと眉をひそめる。
「これを読む限りでは、もうあの2人は・・・もう、身体の関係になってる? みたいだけど、アスカにしては最後の辺りが何か憂いが有るというか・・。まだしっかりした約束を貰わないまま、シンジ君・・・シンジ君よね、相手は。彼に振り回されて、ちょっと哀しい、っていう詩でしょ。なんか・・・あの子だったら、もっと喜びを高らかに歌いそうな気がするけれど。」
「それなのよ。シンジ君がそんな、アスカを翻弄したり焦らしたりするような、ちょこざいなテクニックを使えるものかしらね。」
「アスカが空回りしてるだけって事は?」
「それはないと思うわ−。でも確かにこの頃アスカがシンジ君を怒鳴っているとこ見た事無いわね。むしろ、アスカの方がシンジ君を、いつも目で追ってるみたいよ。」
「シンジ君は?」
「あいかわらずよぅ。お掃除も洗濯も料理も相変わらず鮮やかにこなしてるわ。でも、気になる事が一つだけ・・・。」
「なによ。」
「ちょっとこっち来て。余り大声では話せないわ。」
理科準備室の奥の方に屈み込んで、顔を寄せあう。
「最近さ、あの2人、妙に素っ気無いっていうか、私の前以外ではなかなか視線もあわせないのよ。別に仲が悪いって訳じゃなくて、他人のふりっていうか・・でも、食卓では良く笑うし、冗談も言い合ったりすんだけどね。なんていうか、私に心配させまいとして演技してるみたいっちゅうのか・・・。」
「何よそれ。」
「というのはね、私が急に帰ったりしたり、急な休みが取れて奥で寝てたりすると、慌てて部屋から飛び出して来たり、廊下の暗がりで揉み合ってたり、アスカが目を真っ赤にしていたり・・言い争う声が聞こえたり・・・いろいろ・・。」
「以前みたいに監視用カメラを付けてたりする訳じゃないから、まあいろいろあるでしょう、ってそれで済ませてるんじゃないでしょうね。」
リツコのまなじりが少し上がっている。それを見るとミサトはいつでも何か言い訳をせずにいられない。
それがリツコをますます苛立たせるのが分かってはいるのだが。
「それがさ、いろいろ教師も忙しいじゃない。加えてネルフの残務だってある時はまとめてくるんでさ。」
「あなたそれで保護者が勤まると思ってるの?シンジ君だって男よ。レイみたいに家に独りって訳じゃなくて、やりたい盛りの高校生なのよ。アスカは男の子の目から見たらとても魅力的な娘だし、妊娠でもしたらどうするのよ!」
「だって、あのアスカよ?心配の必要なんかないって思うじゃない。力ずくで、なんて事出来っこないし、シンちゃんだって、現についこの間までアスカの家来か、弟みたいだったじゃないの。」
「たしかに・・・そうだけど。」
「・・・アスカに直接詳しく聞いてみてもいいと思う?ねえ、リツコ?」
すがりつくような目でミサトはリツコを見るが、リツコの方にしても、想像だけで答えられる問題ではない。
「私は何も言えないわよ。私自身あのヒゲになんであんなに執着してたんだか、今もわからないんだから。・・・もしあの人が生きていればきっとまだこだわっていたと思うからね。そんな事は理屈じゃ割り切れる事じゃないし、アスカとシンジ君の間の事は自分達でどうにかするしかないのよ。相談しに来るまで待つしかないと思うわ。女って・・自分でもどうしようもない時有るじゃない。目がこーんなになっちゃって。」
そう言いながらリツコは目の両側に手のひらを立ててみせる。
「その間にどうしようもなくなってしまったら?」
「どうしようも無くなっても何もできないわ。出来てしまった事にどう対応するか、という事しか、言えないわ。」
「やっぱりそうよね。下手に手をだして妙なバイアスがかかったらこじれるだけだものね。」
「そんな時はお姉さん達が、恨まれようがなんだろうが・・・」
理科準備室の中は何時しか僅かな残光が線のように差し込むだけだった。風に吹かれた欅の葉がガラス窓にカサカサ音を立てて当たって、落ちていく。
あの事があってから何週が経ったのだろうか。アスカはずっとシンジの様子を伺うようにして暮らしていた。
無理矢理自分を求めたシンジの行動はアスカにとって確かに衝撃的事件だった。だが、それをミサトに報じてしまえば、おそらく2人は引き離されて2度と一緒には暮らせなくなるだろう。全てを失う事が嫌ならば、つまり中学校以来育んで来た自分の気持ちを、おいそれとは忘れてしまう事ができない以上、我慢するしか選択肢はない。アスカはそんなふうに思いつめていた。
自分とシンジは、他の人達とは違う、もっと強い絆で結ばれている特別な存在なのだと思っていたかった。
それは再び自分が一人になってしまう事への怯えだったのかも知れない。普段のアスカ的思考回路からすれば、自分の心を全く考慮してくれない男など、執着しないどころか、さっさと『返品』してしまうところだ。それができなかったのはシンジは自分にとって既にただの『男』ではないから。きっと分かってくれるという、根拠のない切ない思いに捕われていたからだった。
・・・一体何を分かってくれる、というんだろう。
分かってるのよ・・・あたしがしている事はシンジにとって辛いだけだ。
男の子は好きになればなる程、我慢できなくなっていくんだって。
・・・あたしの中にだって、そういう気持ちはよくよく覗き込むと
確かに有るのかも知れない。・・・確かに有る・・・
シンジと結ばれたいと願う気持ち。
シンジに抱き締められる事は、嫌?・・・いいえ。
激しく交わす、キスは 嫌?・・・いいえ。
首筋を這っていく、あいつの唇、嫌?・・・いいえ。
そっと、素肌のまま優しく乳房をさすられるのは嫌?・・・いいえ。
お腹を降りていくあいつの手が嫌い?・・・いいえ、いいえ。
内腿を降りていく指を許せない?・・・いいえ・・・・
じゃあ・・・あそこを触れる・・・指は?
恥ずかしい程・・・潤っているのを知られたくないから。
だから拒絶しているの?
怖いんだもの・・・まだ、早いって思うんだもの。
触られるという、行為その事自体はどうなの。
・・・・・・いやじゃ・・・ないかもしれない。むしろ・・・
じゃあ・・・何時だってもういいんじゃない。
だめよ! 最後までは駄目!
綺麗なままでお嫁に行きたい? そんな夢を見ているの?
だって・・・小さい頃からの夢だったんだもの。
穢れない清らかな身体のまま王子様のところにお嫁に行って幸せになる。
激しい訓練の繰り返しの中、唯一あたしが見る事のできた、子供らしい、
女の子らしい夢だったんだもの。幸せな夢だったんだもの。
度が過ぎると、シンジを他の娘にとられてしまうかも知れないのよ。
「アスカが素直じゃないからっ。」
あの時の声。未だに憶えてる。私はあの言葉、背筋が凍る思いで聞いた。
男の身勝手と本気で怒った。けど、男の子の本音が見えたように思えた。
シンジに・・・・もしこんな事で見捨てられたら。
心底情けないと思うけど脳裏を一番最初に過(よぎ)ったのはその事だったわ。
あたし、あの時、部屋に帰ってからずっと泣いてたんだよ・・シンジ・・・
こんこん。
ノックの音がした。アスカが返事をすると戸を開け、シンジが入って来た。
アスカは警戒しながら立ったまま対応する。最近は、いつでも足をきっちりと固く包むジーンズを、家でははいている。
「なに?」
「これ・・・。」
シンジの手の上に細長い小さな箱が綺麗にラッピングされて乗っている。
「もしかして・・・。」
「うん、誕生日のプレゼントだよ。この頃ずっとぎくしゃくしてたから。仲直り、したくて・・・。選んでみたんだ。」
密やかに、アスカの顔に喜びが広がっていく。
「・・・ありがとう。開けてみていい?」
「もちろん。」
アスカは自分でも当惑する程、感情が昂っているのに気がついた。
きっと目の縁が赤くなってる、と思いながら俯いたまま包装を外し蓋を開けた。
そこに入っていたのは漆黒のベルベットに金の飾り鎖が前後についたチョーカーだった。大人っぽい、シックなデザイン。今までアスカの持っていた淡いリボンやレース、色ガラス玉がついた可愛いタイプのチョーカーとは対照的だった。
「素敵・・・。何か急に大人になったみたい。」
「中には、薄く鞣(なめ)したバックスキンが入っているんだって。」
シンジはそれを手にすると、アスカ部屋の奥壁に掛けられている大きな姿見の前に、アスカの肩を抱えるようにして誘(いざな)った。ハイネックのセーターを、その前でアスカが脱ぐと、黒い長袖の身体にぴったりしたクルーネックが現れた。
アスカの長く優美な細い首筋が露になると、そこにシンジは光沢のある黒のアクセサリ−を巻いた。白い首筋と対象をなして映え、本当にそれは良く似合った。
「綺麗だよ。アスカ・・・。」
「ありがとう、シンジ、あたしもうあんたに嫌われて、好いてもらえないんだと思ってた。もう、誕生日の・・・プレゼント・・・なんか(ぐすっ)貰えないってずっと・・・(ぐす)怖い思いしてたの。だから・・・すご・・く、うれしい。」
バラバラと床に涙が零れた。シンジは慌ててそれを手で受け、ハンカチをアスカの頬と目にあてた。アスカは次々溢れてくる涙をシンジのハンカチで押さえながら、目を真っ赤にして微笑んだ。
「えへ、えへへ。(ぐす)ありがとう・・・こんなにうれしいこと、ない・・。」
「僕の方こそ・・・」
そう言いながらシンジはアスカの髪をまとめて、上に持ち上げた。
アスカの涙を、指ですくい取る。目と目を見交わし、照れくさそうなぎこちない笑顔を2人は浮かべた。髪をアップしたようになり、首のリボンが良く見える。
「・・・何か急に大人になったみたいね。」
照れ隠しなのか、アスカは同じ言葉を2度繰り返した。今年はもう誕生日を祝って貰えないかも知れないと、本当に不安に思っていたのを、今初めて意識した。
「ごめんね、シンジ。」
「え?なにが。」
「私・・・素直に・・・あの・・・」
声が震える。言ってしまっていいの?と心の中で弱々しい声が小さく呟いた。
シンジが髪を降ろして両方の肩を後ろから押さえる。そしてそのまま手がアスカの前に滑り込んで来て、2本の腕が胸の前で交差した。きゅっと力が入って抱き締められた。言いかけた言葉を反芻すると、顔から火を吹きそうだと思った。
「・・・なるから・・・あの、素直になるから。」
「いいんだ。アスカはこのままで良いんだよ。」
穏やかな表情をして、シンジはアスカの耳に囁いた。そうして、耳の下の首筋にくちづけた。
「無理・・・しなくていいから・・・待ってるから。」
「良いの・・我慢しなくて。私、素直になる。シンジの為だったら我慢できる。」
「君が、ホントに自分でいいと思ったら・・貰って欲しいと思ってくれるまで・・待つよ。」
「貰って欲しいと思うまで?」
「うん・・・。そのかわり、このチョーカーを必ず身体に付けていて。家でも、学校でも。僕が何時でもアスカに触れていられるように。」
頭がのぼせたようで、シンジの言っている事が良く分からなかった。あげるのと、貰って欲しいと思うのと、どう違うんだろう・・・でも、もうできるだけ拒むのは止めよう・・・どんなに辛かったとしても。そうアスカは思い、後ろにいるシンジに垂(しなだ)れかかった。荒れた呼吸を隠そうと大きく息をつくと、ぴっちりと填った、わずかに固く絞まった首筋のチョーカーの感触を感じた。自分がシンジの持ち物になったような気がして、微かにときめいているとアスカは感じる。
「シンジに・・・こんなに愛されてるんだもの。」
何時の間にか、この事についてアスカの理性が閉じてしまったことにアスカは気がついていなかった。シンジに犯されそうになった時必死で守った時に、シンジが吐きだした言葉をアスカは忘れていた。僕を愛してないのっ!と。その時とどう状況が変わっていると言うのだろう。相変わらずシンジはアスカの肉体を求めている。只、優し気なオブラートをまとい、幾分かの知恵を付けているに過ぎない。なのに今のアスカは自分からそれを信じたかった。少年の身勝手な捨て台詞をあの時は怒りを持って、今は甘い心で聞いている。シンジが驚く程のしどけなさで、アスカの細いシルエットが誘うように揺れる。いつものアスカからは考えられない程の媚態にシンジは戸惑う。潤んだ瞳と誘うような艶やかな唇。汗ばんだ肌。触発されるように、後ろから抱いたままシンジはアスカに・・首をねじって受け口付けるアスカ。
顔を離すとアスカは、そのまま頬を赤く染めて少年の耳に囁いた。
「シ・・ジィ、・・たし・・・シン・・に・・・可愛がってほしい・・・。」
びっくりしたような見下ろす目と、しなを作ったような見上げる目線が絡まった。
火を吹きそうな顏が近付いていく。
「・・・言・・・っちゃった・・・」
アスカは自分でベルトを外し、ウエストのボタンをはずし、暫くじっとしていた。
そして、何か決心したように一気にジッパーを降ろした。
真っ白な下腹部が現れる。
柔らかく優しい曲線を幾つも重ねて描かれるウエストから臍、ふっくらした女性特有の下腹部のライン。細い腰からいきなり広がる腰骨とその限り無く細いボディから張り出す厚味のあるヒップライン。鍛えられた太股と下腹を繋ぐ鼠頚部。燃え立つような赤金の柔毛。薫り立つシンジの心を惑わすアスカの匂い。
仰け反るように抱き締められているので、腿の途中までしかジーンズを降ろせない。
シンジが、アスカがジーンズを脱ぐのと同時にシャツをめくり挙げ、脱がせる。
ぴったりしたスポーツタイプのランニングブラも一緒に。
白磁の椀のような膨らみが、シンジの目を射る。
青白いまでの肌は、所々静脈が透けて見える程だった。
胸に当てられたシンジの手が黒く大きく見える。
その手を上から押さえるアスカの指が白く細く見える。
輝くような雪の肌を、シンジの腕と手のひらが黒く動いていく。
アスカは、自分のあられもない姿とシンジに愛撫される姿を見て陶然としていた。
「可愛がって欲しい」と、自分で望んだ。
シンジがずっと望んでいた、あたしの中心、一番恥ずかしい所への愛撫。
最後の事はまだ怖いけれど・・自分自身もそれを望んでいたかも知れない、だから。
・・・初めて見た、男に愛撫されている自分の身体。自分の姿。
何て、細く華奢で、悲しいまでに弱々しいのだろう。
細くて、弱々しいと思っていたシンジに抱きかかえられた自分は、
更にふた周りも小さくて・・・。哀れな程、女の子だった。
アスカの身体中が、ぴりぴりとする程に上気していた。
シンジの手のひらがお腹や乳房の外縁をさすっていくだけで身体中に官能が渦巻いて気が違ってしまいそうな快感が身体の中で走り回っている。
シンジの手はショーツまで腿の半ばに引き降ろし、アスカの身体は桃色に染まって熱く火照り切り、大腿から上に身に付けているものは、シンジの漆黒のチョーカーだけだった。乳房をシンジに包まれ、首筋に唇を押し当てられ、股間には腰から回って来たシンジの手が赤い柔毛の中に潜り込んでいる。
なんて淫微な、なんて恥ずかしい、淫らで卑猥な姿で喘いでいるんだろう。
これがあたし。これがあたしの望んだ姿、あたしのあさましい姿。
全ての女が男の前で曝さなければならない淫猥で爛れ切った愛し合う姿。
男を、シンジを求めて涙を流し呻き声をあげ、叫び、恥知らずな粘液を流す。
混乱した少女の脳裏に、シンジの指が与えてくる強烈な快感と、その黒い輪と金色の小さなポイントの輝きだけが刻み込まれてくる。
目を見開くと、シンジに身体中を可愛がられて喘ぐ自分の媚態がいやでも目に入る。そのしどけなく乱れた姿が、また自分の理性を打ち壊し、自分でも分からないまま、恥ずかしい声を上げさせられている。
・・・自ら望んで、・・・愛撫されてるの・・・
束縛された腿、そこを思いきり開いてるの・・・
胸を突き出し、乳首を口で転がして欲しがっているの・・・
シンジの指があたしの柔毛を指でかき分けてる・・・
ブロンズの馬の足みたいな・・・欅の幹のような・・・シンジの逞しい指。
シンジのが、あたしの腰の裏に押し付けられて、弾けかかっているの・・・
理性は餌付けされた犬の様に踞(うずくま)り、耳を伏せてしまっていた。
・・・愛撫されて、愛撫されて・・訳が分からないようになってる。
きっと、あたしは脳が溶けてしまう程に乱れてしまっているんだろう。
18の誕生日。シンジと一緒に一年遅れの高校2年の冬・・・
シンジの指が、手のひらがあたしの身体中を可愛がってくれている。
何回も身体が仰け反ってる。甲高い声で叫んでる。
わたしって、こんなに淫らで、いやらしい女の子だったんだ。
シンジ・・・シンジシンジ・・・、もう何も分からないよ・・・
わたしどうなってるの・・・どうなっちゃうの・・・
アスカ。
とうとう目の焦点が合わなくなったまま、熱に浮かされたように
ぷつぷつと呟くだけになっちゃった。
まるで燃えているみたいに熱い身体。
張り切った太股の筋肉の間に、失禁したみたいに泉が流れてる。明日香が
言ってた様に、きっともうアスカはすっかり僕の物になりはじめてるんだ。
その事が身震いする程嬉しい。
僕の指や愛撫に耐えきれないまま疳高い叫びをあげてるアスカが愛おしい。
もっともっと、君が言うように可愛がってあげる。
真っ赤に身体を染め、びきびくと痙攣が時々走るほど喜んでくれるんだね。
だから早く僕に愛してくれるように言って。
可愛がるだけじゃなくてどこででも君を愛撫してあげる。
だから今日はもうおやすみ。君を明日からはどこででも可愛がってあげる。
君がしとどに濡れて、情けなくて泣き出してしまうくらい毎日。
アスカが許してって、懇願するくらいに。
身体が燃えて、倒れてしまうくらい愛撫してあげる。
そして、君は、僕の愛撫に堪えきれなくなって、完全に僕の物にしてほしく
なるくらい切ながって、最後の戒めをねだって縋り付くんだ。
きっと、そうしてあげる。だから僕を愛して。僕に身を委ねて・・・
僕の愛が、君の身体のなかで増殖していく。アスカの身体を食べ尽くして
すっかり僕の物にしてしまうまで・・・
12月4日。こうして、アスカの18の誕生日が終った。
As.-Treat me nice.-9/ vegetation【増殖】 2002-03-15